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COLUMN

星野工業代表:星野氏インタビュー

「THOOK(スーク)」を製造されている、栃木県鹿沼市の木工メーカー

 

 

星野工業株式会社

1945年桶屋として創業以来、日本古来より親しまれ、愛され続ける木製品を一筋に作られている木工メーカー。 時代の多様化するニーズに応えるべく、日々研究開発に取り汲まれています。

また、自然環境を守るための取り組みで「間伐材」を積極的に有効活用し新製品の開発、利用チャンネルの研究を続けており次世代に大切な森林を引き継ぐことが重要な役目だと考え、活動されています。


 

星野工業代表:星野氏 インタビュー

 

――― まず始めに星野工業さんの事業内容を教えてください。

星野氏 栃木県鹿沼市で木製品全般の製造販売をしております。

メインとしましては、キッチン用品やバス用品、テーブルウウェアなどの家庭用の木製品を展開しております。
あとは、家具関係で学校用の机や幼稚園・保育園の家具や大型の遊具なんかも手掛けています。
木製品であれば大体やってますね。

 

―――創業昭和20年と長い歴史があると伺ったのですが、事業自体はどうスタートされたのでしょうか。

星野氏 私で三代目になるのですが、祖父が丁稚奉公に出ていてそこで木製品に携わっていたようで、当時は戦時中だったのですが、戦力を大きく見せるために木の飛行機を作っていたようで、空から見るとそこに飛行機があるように見せていたらしいです。

戦争が8月に終わり何をしようとなった時に、木製品に携わっていた技術を使って桶を作ってみようとなり、そこからスタートしたようです。
なので桶作りから始まった会社になります。
丸太の前で撮った創業当時の写真。左の方が創業者の星野さま、右の方は製材屋さんだそうです。

―――歴史を感じますね、桶作りからスタートされて75年間木工製品をつくり続けて今に至るんですね。

星野氏 はい、事業をスタートして高度経済成長に入り、ライフスタイルが変化していく中で求められるモノも増えていくのですが、そのようなモノも商品としてどんどん手がけるようになり、だんだんと商品が増えていった感じですね。

ずっと消費者の意見を聞き、要望を作り続けてきました。

事業スタートの初めの商品の桶は今でも作られています。

環境問題への取り組み


―――現在、会社で力を入れてる事や取り組みについて教えてください。

星野氏 環境的な取り組みをずっとしています。

例えば、森林が成長する過程で、密集化してしまう立ち木の本数の調節=間伐が必要となるのですが。
(その調整の過程で発生する木材を間伐材といいます。)
「間伐」を促進することが健全な森林を育てることにつながると考えていて、間伐材を積極的に有効活用できるように、新製品の開発、利用チャンネルの研究を続けています。
星野氏 また、木は水分を含んでいるので乾燥をかける必要があるのですが、人工乾燥をかける際に使用する乾燥炉の燃料は、化石燃料ではなく余った端材や木材の加工で出てくる粉やくずを焼却して使っています。
基本的に木材は吸った分のCO2しか排出しないので、木材を燃やしても結果的にCO2排出量はプラスマイナスゼロになりますが、CO2を増やす事にはならないのでエコと言えます。
星野氏 環境問題に取り組み大切な森林を次世代に引き継ぐことが重要な役目と考えております。

CEMENT PRODUCE DESIGNとの出会い


―――CEMENT PRODUCE DESIGNとの出会いについてお聞かせください。

星野 はい。2016年度にスタートした関東イレブンプロジェクトという取り組みに参加した際に、そのプロジェクトのコディネーターをセメントさんがされていて、金谷さんとご一緒させていただいた感じになります。

 

―――関東イレブンプロジェクトとはどういったものだったのでしょうか。

星野 関東イレブンプロジェクトとは、関東経済産業局 管轄の一都十県の、技術を活かしたモノ作りをしている事業者が集まり、次世代に残せるような商品作りと、プロジェクト内の事業者同士の取り組みで新たな価値を見出していくというもので、技術の継承と新しいモノ作り目指したものでした。

 

モノを作る時の発想の仕方や、消費者に受け入れられるための商品作りのプロセスを、金谷さんが講師としてコーディネートしていただくといったものでした。

 

―――関東イレブンプロジェクトには、なぜ参加されたのでしょうか。

星野 星野工業の商品というはホームセンターや量販店のイメージが強かったのですが、違う販路を求めたモノ作りに挑戦しようとの考えがあり参加をしました。

 

―――そうだったんですね、そしてこのプロジェクトでTHOOKが開発されていくんですね。
【関東イレブンプロジェクト コンセプト】
〜現在も100年後も受け継ぐモノづくりのカタチ〜

 

関東11の地域には、それぞれの土地に根ざしたモノづくりがあります。
長年にわたり産地で培われてきた産業は、その土地の生活に必要でより豊かな暮らしをつくってきました。
私たちは、これまでのモノづくりの意志を今もその先へも受け継いでより高めていくためにひとつ先のカタチを目指します。
11人の作り手たちが互いに連携を図り、 地域をこえて技術を掛け合わせていく新たなモノづくりを行うプロジェクトです。

THOOK(スーク)開発秘話


―――THOOKを開発するにあたって、どんなところが大変だったのでしょうか。

星野 THOOKは「日本最薄」を謳いたいと思い、薄さにこだわった商品として開発しました。

木工品は、轆轤(ロクロ)を回して刃物で削っていくという技術があるのですが、大体は広葉樹の硬い木材を使用して作られています。
ウチは地場材を使う事にこだわりを持っているので、針葉樹の柔らかい杉や檜で使おうとなるのですが、薄く削るには非常に困難な素材なんです。
なので、針葉樹で薄いカップを作る事に対してとても苦労しました。深さの部分や曲線の部分は非常に難しかったですね。
THOOKは轆轤(ろくろ)を使って刃物で削っていく方法でははなく、専用の機械で削り出して作られています。

 

星野 また、削っただけでは完成ではなく研磨作業といものがあります。木材なので毛羽立ちがあるため研磨をしていきます。
星野 研磨作業も、とても薄いので凄くデリケートになってきます。1mmくらいの薄さの商品だと研磨していてもすぐ穴があいちゃうんです(笑)

 

―――1mmって凄いですよね!実際本当に1mmなんでしょうか?
星野 はい、1mm以下になっています。部分ぶぶんで多少の誤差はありますが、基本的には1mm以下を目指しています。

 

―――職人さんの技術が本当に大事なんですよね。
星野 研磨するにしても手で触っていかないとわからないわけですよ、厚い部分と薄い部分は手の感覚が非常に重要です。
また、木材が柔らかいが故に個体差が出てくるのですが、形を保ちながら仕上げていく技術も必要になってきます。

 

あと、製作は木を選ぶ作業から始まるのですが、樹種選びと言いまして、THOOKに使える材料なのかを判断する作業が非常に大事になってきますね。
それを機械にかけて削り出していき、研磨して仕上げいく感じですね。
底へと繋がる木目のラインも美しく、一つの木から削り出しているということが一目で分かる。

 

―――側面のカーブもとても良いですよね。このカーブを出すのも簡単ではなさそうですね。
星野 形状もそうですね、木工製品を加工する刃物は直線なのでまっすぐ切るのは楽なんですが、曲線というのも凄く難しいんです。
今まではやろうとしなかった形なのですが、設備も含めてそういうのも出来るようになったという背景もあり、今回挑戦した形ですね。
新しい形状や今までウチだけでは出なかった発想はセメントさんからアドバイスをもらって出来た感じになります。

THOOKの詳細はコチラから

熟練の木工職人が木を選ぶところから始め、限界の薄さまで一つひとつ削りだしつくられた逸品が誕生しました。

 

今後の展望


―――最後に今後の活動について教えてください。

星野氏 やはり製造メーカーとして、ものづくりをしている立場として絶えずたえず新しいものを、今の時代にあったものを提案して作り続けていきたいと思っています。その中で環境の取り組みもずっと続けていきたいですね。

 

鹿沼は木工だけでなく、金属加工や園芸なども盛んな地域なので異素材を組み合わせた新しい商品もアリだなと思っています。

 

―――異業種との交流での開発ということですね。

星野氏 そうですね、異業種との繋がりで一つのものを作っていきたいという気持ちがあるので、今後取り組んで行けたらと考えています。

 

ベースとしては、鹿沼というものを知って欲しいという想いと国産材地場材を使っていきたいという想いがあります。
木という一括りではなく、国産材や地場材という所にも興味を持ってくれるような世の中になれば、国産材地場材業界も変わってくるのではと思っています。
その想いの中、新商品の開発に取り組み続けていきたいですね。

 

―――星野工業さんの新商品を楽しみにしております。今回詳しくお話しが聞けてとても勉強になりました、お忙し中対応していただき本当にありがとうございました。
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