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COLUMN

ワークショップレポート『漆の蒔絵アクセサリーづくり、金継ぎ体験』

 

蒔絵と金継ぎ体験で国産漆の現在を知る。

 

2月15日、16日にcoto mono michi at TOKYOで開催された
漆の蒔絵アクセサリーづくりと金継ぎ体験の様子をご紹介いたします。

 

 

今回開催したワークショップは
「白蝶貝に漆を塗り、金粉を蒔いて固めるアクセサリーづくり」と
「ヒビや割れた器をパテで補填し、漆を塗り、金粉を蒔いて仕上げる金継ぎ」の内容。

 

今回お越し頂いた講師は、京都は福知山市夜久野町で、
その土地の文化と丹波漆の魅力を伝える施設「やくの 木と漆の館」職員の平岡さん・髙島さんのお二人。

普段は丹波漆の魅力を様々な方に伝える活動をされています。

 

ワークショップでは、本漆と純金を用いた蒔絵と金継ぎが体験できるとの事で
たくさんの方に集まって頂きました。

 

蒔絵・金継ぎ体験を行う前に
お二人から参加者へ国産漆の現状と丹波漆の“今”をお伝え頂きました。

 

ご説明の中で驚いたのは
日本で使用される漆の98%は中国産であること、
残りの2%の国産漆のほとんどが社寺仏閣の文化財に優先して使われること。
その中で、丹波漆は年間に3kgしか収穫されていない現状を話されました。

 

丹波夜久野では最盛期に約500人の漆かき(漆を取る人)がいたほど
山陰・中国地方からの漆の集積地として賑わっていたそうです。

戦後、化学塗料の発達と安価な中国産漆の輸入増加により、
国産漆は価格面で太刀打ちができなくなり、衰退の一途を辿りました。
夜久野地域で、今では漆かきは片手で数えられるほどに。

熱心な漆かき職人の活動により「丹波の漆かき」としての技術が、
京都府無形民俗文化財に指定を受けましたが、依然として課題は多いとの事です。

 

後継者問題や漆木不足で植林活動で植栽面積を増やしつつ、漆木が育つまでに10年を費やすこと、
せっかく育った漆木が鹿などの食害により悩まされていること。
漆を収穫する6月~10月の時期以外での生業のこと、
丹波固有の生産技術にこだわりながら、
後世につたえていくか大きな課題に立ち向かっていることを丁寧に説明して頂きました。

 

“モノ”=商品の結果だけでなく、その産地の職人に寄り添い、産地や技術、現状をみなさんと学べる場としてコトモノミチはあります。

 

それでは、蒔絵アクセサリーづくりから。

 

 

ひし形の白蝶貝と好きな下絵を選んでいただきます。

 

下絵に、漆を絵の具感覚で塗ります。

 

 

筆先に力が入ります。

 

その後、水分を含んだ状態で漆を乾燥させます。
なぜ、そのような乾燥の仕方をするのかを丁寧に説明される髙島さん。

 

その理由は、漆の主成分である「ウルシオール」が空気中の水分から酸素を取り込み
酸化反応を起こす事で液体から個体になるためと説明。

 

ある程度の湿度、温度の条件が整ってはじめて「乾き」ます。
乾いた状態かを確認するため、平岡さん、髙島さんは「ハァー」と息を吹きかけます。
白く曇って乾きを確認します。

 

 

漆の乾いた状態が確認できたら、金粉をまぶしていきます。

 

しばらくお待ちいただき、完成です。

 

次は、金継ぎです。
参加された方は、自宅から思い思いの”割れ、欠け”の食器を持参していただきました。

 

 

普段、割れたら捨てるはずの食器を持っていらっしゃる理由をお尋ねすると
「祖母が大事にしていた食器を捨てることが出来なくて…」
「自作の器が割れてしまったけど、思い入れが強くて」
理由はみなさんそれぞれですが、
想いを継ぐ、金継ぎとして新たな器へと再生していきます。
まずは、パテ(固形)で割れ、ヒビの箇所を埋めます。

 

 

その後、はみ出したパテの箇所をペーパーで整え、パテで研いだ箇所に漆を塗ります。

 

 

また、漆が乾燥するまで待ちます。

「ハァー」と息を吹きかけ、漆が水分を含んだ状態で乾いたら
金粉を蒔き付けます。
金粉がきれいに漆に蒔きついた状態を見て、参加者からは感嘆の声が上がっていました。

 

体験会はここまでになります。

 

その日に持ち帰る事はせずに「やくの 木と漆の館」へ送り
平岡さん、髙島さんの手で最後、乾燥・研ぎ出しなどの仕上げを行い
約3ヶ月後に参加された方の元へ送られます。

 

 

参加された方からは
「おばあちゃんから譲り受けた食器を金継ぎで、また新しく器が再生するのが本当に楽しみです。」
「そもそも貝がきれいなのに、その上に金粉まで。愛着が湧きます。」
「国産の漆が取れないと耳にしたことはあったけど、そこまで少ないとは。勉強になりました。」
「どのように仕上がるのか楽しみ!!」

 

などのお声を頂きました。

 

ご参加くださった皆様、3ヶ月後、楽しみにお待ち頂ければと思います。
今回講師の”やくの 木と漆の館”平岡さん、髙島さん、誠にありがとうございました。

 

 

講師のお二人が活動されている「丹波漆プロジェクト」は、
京都にて2/27~29の3日間ホテルをまるごと貸し切って開催される工芸の展示販売イベント
“DIALOGUE”に出展されます。
お近くの方はぜひ足をお運びになり、丹波漆の活動や商品をご覧頂ければ幸いです。
Kyoto Crafts Exhibition “DIALOGUE” http://kougeinow.com/

 

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